2016年6月28日火曜日

梅雨時の食養生

湿気の高い日が続いていますね。

東洋医学では、季節ごとにカラダのバランスを揺るがすような気候的な特徴を、“”と呼びます。

この時期の“邪”は言わずもがな、湿気。
わたしたちのカラダの中にも、湿気がたまりやすく、これを湿邪”と呼びます。

“湿邪”は、さまざまな不調和を生じます。

まず、前にも紹介した通り、湿気が高いと、皮膚の竅である汗腺からの水分の揮発がうまくいきません。
発汗がうまくいきませんから、体内に余分な水分がこもりますね。
この状態を、“水滞”と言います。

このため、筋肉や関節が冷え、むくみ、だるさ、痺れなどが生じやすくなります。

皮膚から汗がかけないなら…とカラダは竅という竅―鼻・口・目などからも、鼻水、くしゃみやあくび、涙などで、水分を排出しようとします。
さらに、脳天から水分を気化して出そうとするため、その結果、頭痛やのぼせ、眩暈を引き起こします。

梅雨時独特のだるさや頭の重さは、“水滞”の状態を改善しようと、カラダが頑張っている証拠なのですが…それがそのまま、わたしたちには“しんどい”状態になるのです。

さらに、”湿邪”が関節などに溜まると、“水は火を呼ぶ”関係から、関節炎や腱鞘炎、リウマチのような炎症を伴った痛みを生じます。

滞るのは、“水”だけではありません。
肌から汗と共に発散されるはずの“”がこもります。
梅雨のどんよりとした空に、何となく鬱々とした気分になる人も多いでしょう。

湿気が、心身に及ぼす影響、結構ありますね。

そこで”湿邪”のもたらすさまざまな変化に対し、体内のバランスを保つために、何を食べたら良いか?
これが梅雨時の食養生となります。


湿邪対策その① 利尿作用の高い食べ物

そもそも余分な水分が滞るから、色々な症状が出てくるのです。
カラダの水分代謝を、食べ物でも助けて上げましょう。

この時期に出始める枝豆やトウモロコシ・そら豆・グリーンピース、また、季節を問わず常食できる小豆・大豆・黒豆などの豆類や、その加工品である味噌・豆腐なども良いでしょう。
お茶では、黒豆茶やトウモロコシのお茶、ジャスミン茶、それに漢方生薬の“ヨクイニン”としても知られる“ハトムギ茶”もオススメです。
温かいお茶を飲みましょうね。

湿邪対策その② 脾胃を温め、滋養してくれる食べ物

“胃は湿を嫌い、燥を好む”と言われ、“湿邪”は胃腸も冷やしてしまいます。
その結果、消化機能の低下が生じやすくなります。
これはゆくゆくは夏バテにも発展しやすいので、消化が良く、身体を滋養してくれる食べ物を摂って、今から手当てをしてあげましょうね。

じゃが芋や長芋などの芋類、カボチャや人参、鶏肉や白身魚、キノコ類などが良いでしょう。

湿邪対策その③ 発散と発汗を促し、身体を温めてくれる食べ物

”湿邪”によって、“水”も“気”も滞るため、心身にさまざまな影響が生じます。
気血を巡らしてくれる食べ物も、積極的に摂りたいところ。

玉葱・ネギ・生姜・紫蘇・三つ葉・茗荷・ラッキョウ・セロリなどの香草類や、消化も助けてくれる柑橘類などが良いでしょう。

これだけ食材があれば、いろいろなレシピが出来そうですね♪
梅雨もまた、自然のサイクルで見れば、大地を潤し、水を貯めるための大切な季節です。

上手に付き合っていきましょう(*^_^*)

最後に、新生姜の佃煮のレシピをご紹介します。


最後に、利尿作用のあるそら豆を使ったレシピをご紹介します。

【そら豆ご飯】               

〔材料〕
・お米
・そら豆
・出汁昆布
・塩・酒

〔作り方〕

    そら豆はサヤから出し、水に塩とお酒を加えてサッと煮て置く。
    米を研ぎ、酒・塩適量と出汁昆布加え、水加減して炊き上げる。
    炊き上がったら、下ごしらえして置いたそら豆を混ぜ合わせる。

塩加減は好みです。
そら豆ごと炊き込んでも良いですし、桜えびやシラスなどを加えても良いでしょう。
そら豆を、枝豆やグリーンピースにしてみても良いですよ。
アクセントに、生姜や梅肉などを加えてみるのもオススメです。


豆ご飯は簡単ですし、いろいろと応用できますので、試してみてくださいね(*^_^*)

そら豆と桜えびのごはん

2016年6月24日金曜日

本草MEMO~酸漿(ホオズキ)

近所の神社に立ち寄ると、ちょうど、千日詣りの縁日。

社殿前には、六月の晦日(30日)の “夏越の祓(なごしのはらえ)” に因み、“茅の輪”も設けられ、境内では”ほおづき市”が催されていました。



“千日詣り“
この日にお参りすれば、千日分のご利益があるのだとされる、サービスデー。
浅草の浅草寺の観音さまの、四万六千日(何と、46000日分のご利益がある)の縁日なども有名。

“夏越の祓”の茅の輪くぐり
この輪をくぐって、罪穢を浄めてもらうための行事。”生まれ変わり”の意味もある。
十二月の大晦日の”年越の祓”に対して、六月のものを”夏越の祓”という。
疫病などにならぬよう、暑い猛暑を無事に越えるための祈りを込めた、除災の行事。

”ほおずき市”
江戸時代、青ホオズキの実を呑めば、「大人の癪の虫を切り、子どもの癇の虫を封ずる」というお告げがあったという故事に基づく。「御夢想の虫薬」として、ホオズキの市が立つようになった、とか。

極楽浄土が保証される御朱印とか、お戒壇めぐりとか。
神仏に関わらず、日本人って、結構こういう、お得感(?)を感じる行事が、好きですね。
信心に、お得感も何もないですが…(^_^;)

夏越の祓の茅の輪、千日詣り、ほおづき、これらが、夏の風物詩であることは間違いありません。



さて、今日は、ホオヅキについて。

夏の暑い時期、お盆にも飾られる植物だからでしょうか、ホオヅキは、どこか“死”を連想する植物です。
“鬼火”なんて漢字を当てることもありますしね。

夏を彩る鑑賞植物としてだけではなく、いざと言う時には食用ともなる、救荒植物として紹介されています。

葉ゆで水に浸し苦味を去り調和食ふ。又実の熟したるものも葉の如く製し食べし
『備荒草木図』より
ホオヅキは、ナス科の植物です。
『本草綱目』によれば、葉や茎の味は“”、性質は、やはりナスと同じで、熱を冷ます“”とあります。

ホオズキの実と言えば、祖母がよく、赤く熟した実を焼酎漬けにして、それを咳止めにしていました。
とても苦いのですが、咳きこんで苦しい時に一舐めすると、不思議と治まった記憶があります。

『本草綱目』にも、「湿を利し、熱を除く。肺を清くして咳を治し、痰を化して疸を治する」とありますから、解熱や、咳止めの効能は、確かにあるのですね。
外用薬として、喉に塗っても良いようです。

ホオヅキの根は、酸漿根(さんしょうこん)という生薬です。
子宮の収縮作用を促す成分を含み、江戸時代では堕胎剤として利用された歴史を持ちます。
妊婦には良くない、とも言われる一方で、その解熱の作用から、胎熱に効き目があると言われていました。

使い方によって、毒にも薬にもなる。

植物というのは、不思議な存在ですね。


2016年6月22日水曜日

本草MEMO-梔子(クチナシ)

お散歩をしていたら、梔子(クチナシ)の香りが漂ってきました。

クチナシ:アカネ科クチナシ属の常緑低木

八重咲のクチナシの花。
まるで薔薇のように豪奢ですね。

和名「口無し」の由来は、一説には、その果実が熟しても割れないため、と言われています。

また、学名の”Gardenia jasminoides” は「ジャスミンのような」という意味があるのだとか。
確かに、ジャスミンやイランイランの精油の香りに似た、むせ返るように甘い香りです。

不思議なのですが、薔薇(バラ)や茉莉花(ジャスミン)・イランイランなど、甘い芳香を持つ花の精油は、心臓の熱を冷ます働きを持つ、共通点があります。

クチナシはどうでしょう。
秋に実るクチナシの果実は、“山梔子(さんしし)”と呼ばれる生薬。
その味は“”、性質は“”。
清熱効果に優れ、消炎・解熱・鎮静の他、黄疸の治療などに応用されます。

“血熱”を持ち過ぎたために生じる緒症状を、和らげてくれる感じですね。

この“山梔子”。
あまりなじみがないように思われるかもしれませんが、実は意外と身近な所に使われています。

クチナシの果実には、サフランの色素成分と同じ、カロチノイドの一種・クロシンという物質が含まれています。
サフランと言えば、スペイン料理のパエージャ(パエリア)にかかせない香辛料。
パエージャのごはんは、黄色いですよね。

クチナシの果実も、古くから黄色の着色料として利用されてきました。
発酵させることによって、青色の着色料(青色〔5〕)にもなるのだとか。

これらは、染料としてだけでなく、食品にも用いられています。
代表的な所で言えば、お漬物の“たくあん”の黄色。
その他、和菓子や加工品にも用いられています。

この美しいお花と、たくあん漬けがつながっているなんて、面白いですね(^_^)

自然素材の着色料ですし、その効能も漢方生薬に利用されていることから、お墨付き。

クチナシの果実を乾燥させておいて、お料理やお菓子の色付けに、利用してみてはいかがでしょうか。


2016年6月20日月曜日

本草MEMO~梅


梅雨ですね。
梅の季節です。


青梅の酵素を仕込みました(*^_^*) 

実家近くの高原の清水で、青梅を洗って、 



ひとつひとつを割って、青梅の1.1倍の量の白砂糖と発酵助剤を混ぜて、仕込み完了。


*白砂糖は、”お砂糖のおはなし”で、大量に摂取する弊害を紹介しました。
 ですが、白砂糖の単純な構造が、手作り酵素では、とても良い働きをしてくれるのです。

梅は味は言わずと知れた””、性は寒熱の偏りのない””。(『本草綱目』より)
昔から、“三毒を絶つ”といわれるほど、殺菌力に優れます。


*
“三毒”というのは、本当は仏教で、”克服すべきもの”とされる最も根本的な三つの煩悩、”貪(とん:必要以上に求める貪りの心)”・”瞋(じん:怒りの心)”・”癡(ち:愚かさ)”のこと。人の諸悪・苦しみの根源とされています。



煩悩を毒に例えた仏教の三毒とは違い、梅が絶つ”三毒”とは、””・””・”食べ物”の毒を指します。実際に梅の持つ”酸”は、食中毒の原因となる菌の耐性を超えるのだとか。

また梅の主成分であるクエン酸は、疲労物質を分解してくれますので、夏バテ対策にもおすすめです。

さて、梅と言えば、梅を塩で付け込んだ”梅干”が、伝統的な日本の保存食に挙げられますね。

”酸”は肝臓を、”鹹”(塩からい味)は腎臓を補ってくれる味ですので、梅干しはそれひとつで、“肝腎”の良薬と言えます。

一日一つは、梅干しを食べたいですね(^_-)-



今回は、青梅の酵素の材料が余ったので、梅肉エキス”を作りました。 

作り方はシンプル、

   梅を皮ごとすりおろして、
   その絞り汁を煮詰め、
   飴状になるまで練る。

これだけです。 

*その際、金属性のおろし器やボール・鍋などは使わないこと。
 梅の酸が金属を腐食させる、と言われています。
 五行で考えてみると、梅の味は”酸”、酸味が属す行は”木”です。
 ”金”は”木”を抑える相剋関係。

  梅が金属と相性が悪いのは、五行でも説明できますね。


作り方はいたって簡単なのですが…

固い青梅を一つずつすりおろすのも大変ですし、青梅の量から考えれば、ほんの少ししかできないので、途中で心が折れそうになります(笑)

けれども、梅肉エキスは、古くからの民間薬。


梅の数十倍の効能と抗菌性があるとも言われます。
苦労しただけの価値はあると思いませんか?

食中毒予防に、夏バテ対策に、季節の恵みである梅を、みなさんの生活の中に、たくさん取り入れてみてくださいね(*^_^*)
出来上がった”梅肉エキス”


2016年6月15日水曜日

”湿気”の恩恵~食べもの

前回からのつづき…

湿気と言えばカビ。
カビは食品にとっては、ライバル的存在と言えます。

湿度の高い梅雨の時期は、特に気を使いますよね。
けれども、これも一長一短。

日本には伝統的に、発酵技術というものがあります。

食べ物は酵母・細菌・カビなどの微生物によって発酵が促され、よりおいしく、栄養価も高い、しかも保存のきく発酵食品に生まれ変わるのです。

今は梅雨ですが、湿気の恩恵に預かった伝統食品のひとつに、“梅干”があります。
梅干は、干すという字があるとはいえ、カラカラのドラフルーツとは違います。
シワシワの独特の姿と食感です。
乾燥する地域では、梅干はあのように水分を程よく含んでくれないのだそう。
 

そのほか、代表的なものとしては漬物・納豆などの他に、日本特有の麹カビ(アスペルギルスオリゼ)によって、お酒・みりん・醤油や味噌といった、日本料理に欠かせない調味料も醸造されます。

お味噌については、以前の記事でもご紹介しましたね。
お味噌だけでなく、発酵食品ひとつひとつを紐解いていけば、本当に素晴らしい効能を持ったものばかりです。

”腐敗と発酵は紙一重”
これも、“湿気”の多い気候風土だからこそカビに恵まれ、そのカビの働きを借りて得られた技術なのです。


“湿気”の恩恵は、食べ物だけではありません。

乾燥は美肌の敵。
日本人女性の肌が、比較的老齢になってもキメ細かくて美しいのも、“湿気”のおかげと言えるのではないでしょうか。

ついつい、ベタベタして湿度が高くて気持ち悪い!

と不平不満を言ってしまいがちですが、そのおかげもたくさん貰っているのです(*^_^*)



2016年6月14日火曜日

”湿気”の恩恵~木と湿気

湿気と言えばカビ。

幼い頃、田舎のおばあちゃんの家に泊まりに行った時の、お布団とお座敷の独特のかび臭さを、懐かしく思い出します。

日本に暮らすと、とにかく”カビ”という存在を無視することは出来ません。

例えば、日本の住居は、湿気対策を第一に考えた造りになっていると言います。
粘土質の土と陶工技術に恵まれながら、煉瓦の文化が定着せず、木造の建造物が定着したのも、カビとの戦いの結果なのだとか。

子どもの頃よんだおとぎ話『三匹の子豚』で、一番頑丈な家は、三番目の子豚が作った煉瓦の家でした。


木というのは火に弱いですし、煉瓦や石造りの建造物が主流の文化圏の人から見ると、ちょっと心許ないかもしれません(^_^;)

江戸の街が何度も大きな火災被害にあったのも、木造建築が大きな原因の一つです。

けれども、環太平洋火山帯の真上に位置する日本は、その場所がら、地震が多いという特徴があります。
湿気だけでなく、さまざまな理由で、木造が選択されたのでしょう。

木曽路 奈良井の宿
ここだけを見てみると、日本の住居が伝統的に木造を第一とするのは、消去法で選択を迫られただけ、とも言えますが‥

見方を変えてみましょう。

五行では、“”は“”を生み育てる、という相生関係にあります。
やはり”水”に恵まれないと、豊富な”木”は育ちません。
もちろん、水が多すぎたら木も腐ってしまいますけれどね(^_^;)
なんでもバランスです。

ともかく、“湿気”が多い気候風土というのは、“カビ”などの悩みもありますが、植物が良く育つ環境=豊富な木材を恵んでもらえる環境、でもあるわけです。

そして木というのは、奈良の正倉院に代表されるように、”湿気”に強い(というよりも、相性がいい)のですね。

*現在では校倉造りの壁自体が、湿気によって伸縮するという、調湿空調機能は認められていないとも言われています。
ただ、正倉院や宝物を納めた木箱の材料である、スギやヒノキなどには、やはり優れた調湿効果が認められています。

そう言えば、アロマオイルでも、ジュニパー、シダーウッド、サイプレス、シダーウッド、サンダルウッドなど、ヒノキ科やマツ科の植物や、木を原料とする精油は、全般に”泌尿器系”に働きかける特徴があります。

*木というのは、土から水を吸い上げる、いわば水の通り道。
要するに、体内の水分=”湿気”をめぐらせる働きに相似します。
だから、過剰な水分によって起こる、特に下半身のむくみなどを解消しやすい、と言われています。

木の持つ調湿能力は、“湿気”と敵対する強さではなく、“湿気”に素直な性格と言えるかもしれませんね。

 “湿気”という気候風土の土台の上に成り立つ木造の文化は、”湿気”による恩恵を享受して育っているのです。

そして、“湿気”によって育った木は、自然と、”湿気”による弊害をマイルドにしてくれる働きをしてくれます。

やはりこれも、陰陽のバランス関係と考えることが出来るのではないでしょうか。

衣食住の“住”と“気候風土との関係を考えてみました。

次回は、“食”との関係について、考えてみようと思います(*^_^*)
日本庭園にかかせない苔も”湿気”の恩恵のひとつ


2016年6月13日月曜日

“湿気”について

梅雨ですね。
晴れている日でも、なんだか息苦しいくらい、空気が水分を持っている感じです。

日本の気候風土の特徴を一言で表すなら、この季節に代表される“湿”でしょうか。

日本は本当に湿気の高い国です。

その湿気が、良くも悪くも私たちの身体的な症状、心理的な思考の在り方、文化や生活習慣にまで影響していることを、ご存知でしょうか?



まずは、湿気の身体的な影響について。

私たちの身体は、いつも新しいものを取り入れ、不要なものを排泄する循環運動をしています

特に細胞に必要な新しい水を取り入れ、古い水を出すことを水分代謝と言いますが、この水分代謝は普通、尿・便・汗(要するに自分から出ていくもの)によって行われています。

マンガなどの“暑さ”の常套表現として、よく“汗”が描かれますね。

ジットリ・ベタベタ・ダラダラ・ビッショリ・・

様々な発汗の表現があるように、確かに暑いと、時に不快感を伴って皮膚に汗が滲み出てきます。
でも、汗をかく理由は、“暑さ”だけではありません。
体内の排熱のために発汗すると同時に、水分代謝も兼ねているのです。

さて、目に見えて汗をかいているのだから、水分を十分に出しているように思えますよね。
ところが、日本人よりも、乾燥した気候風土の人の方が、汗腺の数は多いのだそうです。

不思議ですね。

皮膚から出る水分は、“汗”というカタチだけではないのです。
自分でも気がつかないうちに、気体として体外に水分を放散することを、不感蒸泄と言います。

皮膚から蒸発する水分というのは、意外に多いもの。
*一日に約600ミリリットルの水分が蒸発するとも言われます。

乾燥していると、皮がカサカサしてくることがありますが、それは乾燥した空気が、皮膚の水分を奪うからです。
つまり、乾燥した状態だと、皮膚から水分を蒸発させることが出来るのです。

ところが、湿気が多い日本では、不感蒸泄はほとんどできません。
だから、汗をかくのです。

つまり、日本の気候では、皮膚からの水分代謝の効率が悪いと言うことになります。
その分、体内の不要な水分を出すためには、利尿に頼るしかないのです。

利尿を主るのが、五臓の中の””。
水分代謝を利尿に頼る日本人は、この腎にとても負担がかかります

これは、気候風土がカラダに要求する条件、と言ってもいいのかもしれませんね。

東洋医学では、腎の働きを補い、滋養する味は鹹(塩辛い)味と言われます。
この鹹味の“鹵”は、苦汁を意味するそうです。
苦汁と言うのは、現代の栄養素で言えば、マグネシウムやナトリウム・カリウム・カルシウムなどのミネラルにあたります。
つまり、ただ塩辛いだけではなくて、ミネラルが含まれる味を鹹味と言うのです。
 
その代表が、海の水

不思議ですね。

海に囲まれた日本だからこそ、湿気が多い気候風土なのです。

湿気が多い気候風土だからこそ、”腎”に負担がかかるのです。

そして、その海の水が、”腎”を助けてくれる味なのです。

”海に囲まれた島国”というひとつの事実に対して、負わなければならないリスクと、同時に与えられるメリット。

これも陰陽-自然界のバランスと考えることが出来るのではないでしょうか。


2016年6月10日金曜日

本草MEMO~ドクダミ

幼い頃、両親の結婚記念日のお祝いに、何かお花をあげたくて、弟とお花を摘みに行きました。

遊び場にしていた小川の脇に、可愛らしい、白い十字のお花がたくさん咲いていました。
しかも、四月八日(お釈迦様の誕生日)の花祭りの“甘茶”を思い出させる、甘い香り。

これはステキなお花を見つけたヽ(^o^)丿
と、喜んでバケツいっぱい摘んで帰ったものです。

…母には、あまり喜んでもらえませんでしたが…(^_^;)

ドクダミ。


庭の草取り時は敵にしか思えませんでしたが、改めて見ると、
すっきりした白い花や、ハート型の葉っぱ。

綺麗な佇まいをしていると思います。


独特の香りがあり、またその生命力のたくましさ故に嫌われもしますが、
その名の通り、毒を解する効力を持ち、生薬名は“十薬”。


『本草綱目』によれば、その味は“”。
香り高いものは、五味では“辛”に分類されていることが多いです。
胸がスーッとして、清涼感も感じる香りですが、性質は “微温”。


湿疹・かぶれなどには、生の葉をすり潰して貼ると良いとか。
葉っぱは、天ぷらにして食べると、匂いもなく頂けるそうです。
でも、多く食べるのは、あまり宜しくないようです。


葉や花を乾燥させた“どくだみ茶”は、一般的に知られていますよね。
煎じた液には利尿作用、動脈硬化の予防作用などがあるそうです。


ただの“雑草”として見るのは、ちょっと可哀そう。

一輪挿しに挿してみてみも、なかなか良い野草です(*^_^*)


2016年6月9日木曜日

小食に心がけるべし

江戸時代中期の観相学の大家、水野南北(1760-1834)という人が面白い説を唱えました。
節食開運説(小食に心がけると、運命が良くなる)”というものです。

*「観相学」は手相や人相をみて、その人の性質や運命を占う人のことです。


分限よりも大食するもの運よろしからず。
諸事心にまかせず、不時の損失など多かるべし。

蓋し、天より受けえたる食には際限あり。
これをよけいに食するときは、日に天に借りを生ず。
食い費やしたる食は、みな糞となりて再び世に還らず。
何れの年にこれを返納するか。

人は催促せずとも天はこれを取り立て給う。
われ返さずは子孫に取り給う。
子孫あらざれば、その家を亡ぼし、先祖をたやし給う。

わが借りたるものを返すは天地の理なり。

されば分限よりも、大食をなす者は運よろしからず。
不意の災禍損失多かるべし。
これみな、天よりわれを戒め取りあげ給うと知るべし。

…(中略)…

人命を養うがための食なりといえども大食暴食をなせば草木に肥料の過ぎたるがごとく、かえってその食をもって人命を損ず。

また粗食をもって相応の養いをとるときは、草木のよく成長するがごとく、無病にして、自ら長寿を得。
これによりて大食過食をなす者は、己れの命を的にして矢を射るがごとし。

これみな心賤しきにより。
これを眼前の餓鬼道という。
また人面獣心ともいう。

…(中略)…

総じて飲食を過ごすときは心自ら濁り、気、自然に重くなり、迷いの心を生じ、その道をえがたし。
水野南北 『南北相法極意』より


人が生命活動を維持するうえで、“食べる”ことを疎かにすることはできません。

しかし、生命活動でもっともエネルギーを使うのは、実は食べ物を消化することだとも言われています。

実際に消化には、大量の気血を消費します。

たとえばお昼ご飯を食べた後は、眠たくなりますよね(p_-)
これは血液が消化器に集中し、脳へ上る血の量が少なくなるために生じる、生理的な理由があります。

ですから食べ物をたくさん食べれば食べるほど、全身の血液は胃腸に集まり、頭は貧血状態になって、ぼんやりしてしまいます。
消化するためにエネルギーを消費し、睡眠時間も長く必要とするようになるのです。


巷ではプチ断食などが流行っているようですが、
実体験から、小食に心がけていると、身体が軽くなり、集中力も高まりますし、精神的にも安定して穏やかです(*^_^*)


食べる”量”は、心身への影響だけではありません。
水野南北さんのように、当時日本一と謳われた観相学の大家が、ご自分の体験やたくさんの例をみて、運勢を良くする極意を“節食にあり”と説いています。

その理は、

わが借りたるものを返すは天地の理なり

この一文に良く現れています。

宇宙に隈なく溢れている“気”を、わたしたちは呼吸という行為で頂いて、自らの生命力を充実させます。

ここで大切なのが“”。

“気”は不足もアンバランスですが、“適切な分”を過ぎるのもまた、アンバランスなのです。

適切な分より多く飲食すると、何等かのカタチでその精算…というより、バランス調整が入る。
それが、その人の持つ良い運勢や徳などの、見えない“貯蓄”を、切り崩すことになるわけですね。

“食”と“人の運命”とが、密接に関係している。

これは、”自然と自分がつながっていてめぐっている”、という感覚を持って考えると、納得できるお話です。


飲食物の豊富な・・と言うよりも氾濫している現在、欲を抑えて小食を心がけるのは、意外と精神力を試されますよね。

お腹がいているか、いないか、を自分に問うと、それ程空いてもいないのに、食べ物を口にしていることが多いくらいです(・・;)

単に自分の体重の増減や健康のためだけに小食に心がけるのではなく、自然から頂く恵みを、“適切な分”に止めるように、お互いに努力してみましょう。


そして、体調が優れない時。
お薬や身体に良い食べ物を、加えてみるのも良いでしょう。


でも、意外ですが、足し算の健康法ではなく、引き算の健康法も、これからの時代には必要となるかもしれません(*^_^*)


”ある日の食事”
梅と昆布のもち麦ごはんのおにぎり
小松菜と根菜のお味噌汁
切り干し大根と煮物