2016年7月26日火曜日

辛味の陰陽 その②

「体内の熱を一定の範囲に保つ」というのが、絶対的なカラダのバランス法則だとしましょう。

そうすると、熱が下がり過ぎれば、産熱の機能が、熱があり過ぎれば、排熱の機能が働きます。
この産熱と排熱を、身体の中における、“火と水の働き”に例えれば、確かに分かりやすいですよね。


ここで唐突ですが、真夏に室内を28度に設定してエアコンを入れたら、なぜかもっと暑くなって、どうしてだろうとリモコン画面を見てみると、機能が“暖房”になっていた、なんてこと、ありませんか?

未経験の方は、一度お試しあれ♪

暖房の28度と、冷房の28度、同じ温度にするのに、全然プロセスが違うんだってことを、納得して貰えると思います。

でも、カラダというのは、冷房や暖房のように、機能を切り替える訳ではありません
熱を冷ますのも温めるのも、同じ機能の延長線上にあるのです。

改めて、辛味の働きである“発汗・発散”作用を考えてみましょう。

発汗・発散は、血流を良くして体表(皮膚)まで血熱を運び、結果として身体の熱を放出する生理現象です。

つまり辛味は、気血のめぐりを良くして身体を“温めてくれる”とともに、余分な熱を“排出してくれる”という、一見相反する働きを持ちます。

でも、熱があり過ぎれば発散するし、熱が足りないところがあれば、そこに熱を巡らせる香辛料の働きは、「体内の熱を一定の範囲に保つ」という点から見れば、矛盾していないのです。

寒くて血熱が内臓などの中心部に集まり、末端が冷えている時は、体表に気血を巡らし、熱を全身に運んでくれるから、”温め”に作用。
よって、その時点でのカラダの作用から見れば、“陽”の性質。


暑くて血熱が身体の中にこもっているような時は、皮膚から気を発散し、汗を出してくれるから、結果的には”熱を下げる”ように作用。
この時点でのカラダの作用では、“陰”の性質。



“陽極すれば陰となり、陰極すれば陽となる”


という言葉の通り、陰と陽はお互いを別って考えることはできません。

結論から言えば、辛味は温める働きを持つから“陽性”にもなりうるし、排熱する働きを持つから“陰性”でもある、わけです。

わたしの考えでは…どっちも正解ヽ(^o^)丿

ただ、”熱を全身の巡らせる“作用があっての”発散・排熱“作用であると考えれば、最初の作用は、素直に”温め“に働くと考えて良いように思います。
辛味を食べ過ぎれば、カラダが冷えるかというと、そうは言えませんし。
どちらかと言うと、熱よりは“気”を散じ過ぎて、中が空っぽ状態になる可能性はあります。

いずれにせよ、食べ過ぎはどの食材も弊害をもたらします。

これは、辛味だけに言えることではありません。
全てのものに言える、陰陽の本質でもあります。


なぜなら、わたしたちだけでなく、全ての物は常に“動いて”います。
お互いに、“作用し合う”ということは、陰陽の消長の波を描いているということ。


陰になったり陽になったり、を繰り返すことで、その“動き”が営まれているのです。

陰に偏り過ぎれば、陽が隆盛し、陽が強すぎれば、陰が抑える…

不足を助け、過多を抑える、この働きは別のものではなくて、同時に作用しているのです。


…辛味の陰陽から、宇宙の陰陽のお話になってしまいました。

いずれにしても、暑い夏、辛味の散熱・排熱の働きを借りると同時に、冷房や冷たい物の摂り過ぎで、体内を冷やし過ぎることを予防する意味では、辛味の温め作用も有効に借りましょう。


食養生レシピ                                       

最近、“薬膳カレー”という言葉を見かけますが、カレー粉のスパイスは、漢方生薬でもおなじみのものが多々あります。


色の素となるターメリックは、生薬では鬱金(ウコン)。
辛さの素となるのは、

蕃椒(トウガラシ)・胡椒(コショウ)・大蒜(ニンニク)・生薑(ショウガ)
いずれも『本草綱目』でおなじみです。

香りの素となるとなるハーブたちは、カタカナ名だとしっくりきませんが、やはり生薬として知られます。
クミン=馬芹(バキン)
クローブ=丁子・丁香
シナモン=桂皮
カルダモン=小荳蒄(ショウヅク)
ナツメグ
=肉荳(ニクズク)
キャラウェイ=姫茴香
フェンエル=小茴香


生薬をミックスして作るようなものですから、“薬膳カレー”というのは“白い白線”というようなもの。

ただし、日本の食卓で馴染み深いカレーは、市販のカレールーを使ったものだと思います。
カレールーはかなり油分が多く、食塩や砂糖の含有量の方が、カレー粉を上回るのだとか。
お肉を入れて、油で具材を炒めて、油分たっぷりのカレールーで作るカレー…

これでは、辛味や香辛料の効能を借りるどころか、胃が弱りがちな人には、却って負担になってしまいますね。

そこで今回は、油分を抑えた、さっぱりとした夏野菜のカレーの作り方をご紹介します(*^_^*)

【夏野菜カレーの作り方】


〔材料〕


・玉ねぎ・ナス・トマト・パプリカ・ズッキーニ・茸類・セロリ・パセリ等

・ローリエ(月桂樹)
・コンソメの素
・カレー粉(粉末タイプ)
・調味料:塩・トマトピューレ・ソース・サワークリーム等



〔作り方〕


①玉ねぎは薄くスライス。ナス・トマト・パプリカ・ズッキーニ・茸などの夏野菜は、適当な大きさに切る。
②鍋に①の野菜類を入れ、水・コンソメ・ローリエを加えて、とろ火で煮込む。
③沸騰してきたら火を止め、カレー粉を加えて、調味料で味を調える。


 *トマトは酸味の強いものを選ぶ。
トマトの水煮缶を薄めて煮ても良い。
 *野菜類をオリーブオイルで炒め、後から加えると、野菜の彩りが良い。

カレー粉だけでは味が不安な場合は、市販のカレールーを少量加えるなど、工夫してみてくださいね(*^_^*)

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