八百屋さんで、新生姜を見かけるようになりました。
生姜は生薬にも使われていますが、一般的な食材として、日々のお料理にも利用されていますね。
そもそも、本草というのは、中国伝統医学においての、“薬物に関する学問のこと”を指します。
伝統的な医学では、主な生薬の原料は植物。
それが食用に適すか、薬用に適すかの違いであって、食べ物と生薬には、厳密には区別はありません。
“薬食同源”という言葉の所以ですね。
それぞれの植物の性味や効能についてご紹介する際、参考にしている『本草綱目』は、明の時代(1500年代)に、李時珍という人によって編まれた、医薬物学書です。
ここには、性味・効能はもちろん、植物の名前の考証や、具体的な処方方法、様々な書物や先人達の説などもまとめられており、本草学者であるとともに、医家でもあった李時珍さん自身の体験や考察も述べられています。
中国の本草史上、その量と内容がもっとも充実したもので、日本の本草学にも大きな影響を与えました。
ところで、『本草綱目』にもまとめられていますが、中国最古の本草書といわれる『神農本草経』(本経)や、『名医別録』(別録)では、人に作用する薬効の強さによって、上・中・下の区分(“三品分類”)がされています。
上薬一百二十種為君 主養命 以応天
無毒
多服久服不傷人 欲軽身益気不老延年者
本上経
中薬一百二十種為臣 主養性 以応人 無毒有毒
斟酌其宜 欲遏病補虚羸者 本中経
下薬一百二十五種為佐使 主治病以応地 多毒
不可久服 欲除寒熱邪気破積聚癒疾者 本下経
-『本草経序録』より-
(上薬は百二十種、君と為す。命を養うを主どり、以て天に応ず。無毒。多く服し、久しく服するも、人を傷れず。身を軽くし、気を益し、老いず、年を延べんと欲する者、上経に本づく。
中薬は百二十種、臣と為す。性を養うを主どり、以て人に応ず。無毒・有毒、其の宜しきを斟酌す。病を遏め、虚羸を補わんと欲する者、中経に本づく。
下薬は百二十五種、佐使と為す。病を治するを主どり、以て地に応ず。毒多し。久しく服すべからず。寒熱・邪気を除き、積聚を破って疾を癒やさんと欲する者、下経に本づく。)
上薬(上品)とは、無毒で、“命を養うもの”。多く、長い期間服用しても良いもののこと。
中品(中薬)とは、上薬を助け、“体力を養う滋養薬”。有毒のものもあるので、加減して用いる必要がありますが、病を抑え、身体の衰弱を補う働きを持ちます。
下品(下薬)とは、“治療を目的としたもの”。病の主因となる邪を散らす作用を持ちますが、毒性も強いため、長期間の服用は良くありません。
上・中・下の順に人体への作用、ひいては毒性も高くなります。
病を抑える作用が強い程、“良い薬”という評価があっても良さそうなもの。
ですが、“毒にも薬にもなる”という言葉があるように、植物は陰陽の二面性を併せ持っているわけです。
さて、話はもどって、生姜。
生姜は『本草綱目』の記述によれば、「別録中品」(つまり、『名医別録』で中品と分類されている)とあります。
その味は“辛”、性は“微温”。
「生で用いれば発散し、熟して用いれば中を和す」
「薑(はじかみ:しょうがのこと)は辛にして葷(くん:葱・ニンニクなどの匂いの強いもの)ならず、邪を去り、悪を避けるもので、生で啖ふにも、熟して食うにも、醋(酢)・醤・糟・塩にも蜜煎にも宜しからぬはなく、蔬菜(そさい:青物・野菜のこと)になり、調和剤になり、果子になり、薬になる。その利用範囲の広いものだ」
とあり、大変優れた効能を持っています。
しかし、“中品”ランク。
「久しく食すれば、積熱して目を患う」ともあり、生姜に限ったことではありませんが、やはり極端な摂取はオススメできないようです。
ただ、「冷え」を解消したり、反対に滞った「熱」を除く発散の作用は、この季節にぜひ生かしてほしいもの。
上記の通り、“中品”の役割は、「君」(主役)ではなく、「臣」(補佐)役です。
お素麺や冷やしうどん、冷奴や茄子の煮浸しなどに添える、“薬味”の使い方は、生姜の持つ力を借りるベストな方法と言えますね。
最後に、新生姜の簡単レシピをご紹介します。
【新生姜の佃煮】
〔材料〕
・新生姜 800g~1㎏
・醤油 100~130ml
・みりん 50~70ml
・てんさい糖又は黒砂糖 200~220g
*好みで昆布やかつお節を加えても良いでしょう。
〔作り方〕
① 新生姜を水で洗い、皮ごと薄切りにする。
*少し太めの線切りでも良い。食感が違うので、好みの切り方で。
② 切った新生姜を水に晒す。
もしくは辛味が強いようなら、沸騰したお湯にさっと通して、湯でこぼす。
③ 調味料と、良く水気を切った新生姜と共に鍋に入れ、
弱火で焦げ付かないように煮詰める。
新生姜の佃煮 |
長期間保存がききますし、ピリッとした辛さで、常備菜として作っておくと、重宝しますよ(*^_^*)
箸休めや口直しにいかがでしょうか。
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