2016年3月21日月曜日

食べ物の陰陽~その2

薬膳の基本に、陰陽の理論があることは以前取り上げました。
食べ物には、食べた時に体に作用する働きによって、

体を温めるように作用するものを陽(熱・温)
熱を冷ますように作用するものを陰(寒・涼)

としています。

ヘイちゃんのバランス絵本①~食べ物のひみつ~の巻末に、陰性食品と陽性食品を紹介したページがあります。

これは、中国の医薬学書『本草綱目』や、江戸時代の医家人見必大の著した『本朝食鑑』などを参考として、その食品そのものの持つ基本性質を分類したものです。

ところで、陰陽は比較の概論であり、絶対のものではない、ということをお話ししました。

食品にも、同じことが言えます。

例えば、食べ物そのものの持つ性質が陰性だったとしても、それを中和したり、陽性に働くようにすることができます。

その秘訣は、調理・食べ方にあります。

そもそも、人が“食べる”という行為をする時、そのまま生で食べるということは、稀です
必ず、何かしらの手を加えますよね。

お刺身や生野菜サラダがある、と言われるかもしれませんが、それにしたって、そのままそれだけで食べることは、まずありません。
お刺身ならわさびや紫蘇などの薬味を添え、お醤油を付けて頂きます。
野菜サラダだって、塩気やスパイスなどがなくては、食べるのもちょっと大変でしょう。

おそらく生でそのまま食べるのは、一部の果物くらいのものかもしれません。

食べ物の持つ性質に関わらず、人はその食べ物を調理して食べます。

まずは、調理の前段階、食品の製法

食材の保存性を高め、バリエーションに富んだものへと進化させるひと手間です。
この代表的なものに、乾物や発酵食品があります。

天日に干して水分を飛ばす乾物。
例えば昆布やヒジキなど、海藻類はカラダを冷すもともとの性質がありますが、乾物にすることで、陰性が抑えられます

また、発酵食品である、酒・みりん・味噌・梅干しなどは、原材料の米や大豆・梅が中庸(平)に分類されるのですが、発酵することで、いずれも陽性の働きを持ちます
*いずれも腸内環境を整える食品。腸内での代謝には発熱が伴うため、陽性に分類されると考察される。

そして食品の調理

茹でる・煮る・炊く・焼く・炒める・揚げる…ほんどに“火”を入れる工程がありますね。

“火”は陽の具現化したもの。
調理して“火”を加えることで、その食べ物はより陽の性質を持つのです。

もう一つが、食べ方

調理は”火”を入れるだけではありません。
他の食材と組み合わせたり、味付けしますよね。
調理をしたものは、少なくとも二つの味以上は混ざっています。

例えば、陰性とされるタコのお刺身。
ボイルするかしないかで陽性の度合いが変わりますが、この場合は生で頂きましょう。
タコが甘味に属して、添えられたワサビなどの薬味は香辛料=辛味ですし、醤油は鹹味、これだけで三味は揃っていますよね。

性質でみると、香辛料の辛味が身体を温める陽性の食材ですから、この時点でタコの陰性は中和されるわけです。

こうして、人の口に直接入る形での食品の陰陽を見てみると、圧倒的に中庸(平)・陽性(熱・温)が多いと言えます。

食べ物の陰陽の基本性質を知った上で、その食べ物をどのようにして食べるか、が食養生の基本になります。

“食べる”行為は生物共通ですが、調理というひと手間は、人以外の生物はしません。


毎日のお料理は、陰陽の偏りをなくし、よりバランスの良い状態で体に取り入れる、大切なプロセだということを、ぜひ知って頂きたいと思います(*^_^*)

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