2016年5月30日月曜日

本草MEMO~菫(スミレ)

スミレももう終わりですね。 
タチツボスミレ
三色スミレ
スミレは、スミレ科スミレ属の総称。
非常に種類が多く、どれも可憐で可愛らしいお花ですが、これも江戸時代の救荒植物として紹介されています。

「葉ゆで水に浸し食ふべし」  ―『備荒草木図』より―

味は””、性は温熱の偏りのない””。

大・小腸を利し、黄症(腸中に熱の出る症)を泄(のぞきさ)る。
酒後の熱を去る。 『本朝食鑑』より―

”平”とありますが、働きから見ると、熱を冷ます陰性寄りの性質を持っているのかもしれません。

さて、スミレを単純に茹でて食べるのも良いですが、もう少し手をかけたものでは、ハプスブルク家の皇女エリザベート(シシィ)が愛したとも言われる、”スミレの砂糖漬けが割と知られているかもしれません。

作り方は簡単。

*スミレの花だけでなく、食用に適したいろいろなお花でも代用可能です。

さっと水洗いして水切りしたスミレの花に、刷毛で卵白を塗り、グラニュー糖または粉砂糖をまぶして乾燥させるだけです。

卵白の代わりに、蜂蜜を使用しても良いでしょう。

友人がお庭に咲いていたスミレで作って来てくれた”砂糖漬け”

また、これだと甘味だけでぼんやりした味なってしまうので、締りを持たせたい方は、少量の塩を加えたり、レモン汁などの酸味を加えると、良いと思います。
*以前紹介した【蜜漬梅花】を応用しても良いかもしれません。

そのまま砂糖菓子としても頂けますが、
紅茶やハーブティーに浮かべると、ちょっと豊かな気分になりますよ(*^_^*)

 


2016年5月20日金曜日

本草MEMO~繁縷(ハコベ)

春の七草のひとつ、ハコベ。
白い小さなお花が可憐な感じですが、意外と生命力の強い野草です。


七草粥のメンバーとしてよく知られている通り、もちろん食べられます。

「葉をゆで、水に浸し、塩味噌に調へ食すべし」 『備荒草木図』

その性味については諸説ありますが、江戸時代の本草医薬学書『本朝食鑑』によれば、味は微鹹(甘くて、少し塩辛い味)、性は寒熱の偏りのない

「一切の積年の悪瘡・下血に良い」 『本朝食鑑』

とあり、滞った血に働きかけるようです。
また、”乳”は血が変化したものと言えます。

ですからハコベは”母乳”とも関係が深く、

「血を破り、乳汁を下す。産婦が食ふが良し。産後腹に塊通あるには、酒で炒って汁を絞って温服する」 『本草綱目』

「全草を婦人産後の浄血薬及び催乳薬として煎用す」 『食用植物誌』

など、妊婦さんへの効果を期待した利用法が記載されています。

民間療法でも、ハコベを食べると母乳が出ると言われ、また煎じて飲めばお産前後の養生に役立つと言われています。

他に、面白い利用方法としては、江戸時代はハコベのしぼり汁と塩を煮詰め、”ハコベ塩”を歯茎の出血や歯槽膿漏の予防など、口内ケアにも使用したとか。

”急ぐ道 歩いて息が切れるなら ハコベの汁を しぼり飲むべし”

と古歌にあり、息切れの妙薬でもあるそうです。

抗菌・消炎・体を温めるなどの作用から、ただ何となく通り過ぎる草で終わらせるのは、もったいない(笑)

採取したての物は、塩ゆでして一晩水に浸ければ、お浸しや御汁の実にもなりますし、細かく刻んで混ぜご飯にしても、クセが無くてオススメです。

乾燥させたものをお茶にしても良いですが、少し青臭いので、陳皮(ミカンの皮を乾燥させたもの)や山椒など、香りの良いものと合わせると、独特の匂いも消えますよ。

昨年、大量に採取したハコベを乾燥させ、お茶にしようと思ったのですが、青臭さが気になり…そこでハコベを粉にして、岩塩と合わせた”即席 ハコベ塩”を作ってみました。

しかし、なかなか使用する機会がない…(-_-;)

そこで、他のハーブと合わせてパンに練り込んでみたら、青臭さも気にならずに頂けました♪

ハコベとハーブの全粒粉パン ゴーダチーズのせ

ひよこ豆と青大豆と、セロリ・玉ねぎ・ピーマンのみじん切りを、
トマトやクミン・ターメリックなどのハーブで煮たもの ヨーグルト添え
(長い…適当な料理名が分からないので(^_^;))



2016年5月18日水曜日

”自然に生きる”ためのコツ

仕込んだお味噌の表面に、白カビが生えました。

仕込む過程で、望まない菌が迷い込んでしまったか、少~しだけ、水分が多かったのかも。
でも、そこだけこそげ取って、手入れ終了。
あとは、酵母菌たちを信じて、お任せです。

発酵と腐敗は紙一重。

人にとって有益な分解・生成をしてくれるのが発酵なら、人にとって良くない発酵が腐敗。

この二つは表裏一体でセットです。
これは“自然”なこと。

陰陽の在り方を自分なりに学びながら思うのは、わたしたちは“イイとこ取り”することに慣れ過ぎてしまったのかな、ということ。

メリットとデメリット。
長所と短所。
それは背中合わせで、本来、同じことなのではないでしょうか。

手作りのお味噌は、苦労して仕込んでも、失敗してしまうこともあるかもしれない。
そんなことをしなくても、それなりのお金を出せば、いつでもお味噌は手に入ります。

でも、カビを目の敵にして、“カビの生えないお味噌”を選ぶなら、防腐剤などの添加物も受け入れるしかありません。
それは、発酵食品としてのお味噌の良さを、残しているのでしょうか…

デメリットを無くす、というやり方は、メリット自体の存在価値にも影響します。
メリットだけを望むのは、無理なこと。

“自然と調和”して生きるには、自然が恵んでくれるメリットだけを要求することは出来ません

今よりも、少~しだけ、“不便”な生活を受け入れてみる。

そしてそれを、楽しんでみる。

それが、“自然と調和”して生きるための、やさしい一歩じゃないかな~、と思います。






お味噌を使った簡単レシピ♪

【味噌の焼きおにぎり】

余ったごはんをおにぎりにし、一晩おいて冷や飯にする。
ちょっと固くなったおにぎりの両面を炙り、味噌を塗って出来上がり。

お醤油で作っても、味がしみて美味しいです(*^_^*)

2016年5月16日月曜日

本草MEMO~アザミ

葉も花もトゲトゲしているアザミ。


とても食べられそうにない、と思われるでしょうが、若苗の頃は、根・葉ともに、
「灰水にてよくゆで、水をかへ、さらして後食ふ。又かて物とす」(『かてもの』)とあり、救荒植物となります。

『本草綱目』によると、その性は”温”、味は”甘”
「宿血を破り、新血を生じる」と記載があり、体内に滞った血を巡らせてくれる働きをもつようです。

同じキク科の植物で、姿も似ている紅花もまた、同様に若葉・苗が食べることができ、「血」に働きかけます。

紅花は名前の通り、「紅」の原料。
口紅は、飲食の際などに、どうしても体内に入ってしまいますが、本来の「紅」は、食べても安心。

女性を華やかに彩るだけでなく、むしろ体内に入ることで、「血」のトラブルの多い女性を助けてくれるわけです。

とはいえ、紅花は、花の時期にお花屋さんで手に入れることは出来ますが、栽培がほとんど。

ここはひとつ、同じような効能を持った、野辺に自生するアザミを用いて、リップクリームを作ってみても面白いかもしれません。


*簡単リップクリームの作り方♪

アザミの花・根を搗いて、しぼり汁と少量の蜂蜜を混ぜる☆

 …これだけです(^_^;)
 クリームというか、シロップといった感じですが…
 ここにひと手間かけて、蜜蝋やホホバオイルを加え、適度な固さと油分に調節しても良いでしょう。
 香り付けにアロマオイルを加えてみてもいいかも。
 もちろん、花や葉を直接蜂蜜に浸けこんで、”アザミ蜂蜜”として食用にしてもいいですね。


アザミのお花は、乾燥させてドライフラワーにしても可愛いです(*^_^*)


2016年5月10日火曜日

本草MEMO~のびる

野蒜(のびる)は、この季節に一度は味わいたい春の味。
 
独特の香りと辛味があり、江戸時代の本草書『本朝食鑑』には、その味は””性は””。
 
「気を下し、血を和らぐ」とあるので、気血が上半身に上りやすい春にぴったりの食材です。
 
 
香りを楽しむため、シンプルに酢味噌をつけて頂きました。


ちょっと辛いので、苦手な方も多いかもしれません。
そんな方には、胡麻油でサッと炒めた卵とじもオススメです。

田舎では見つけるのにさほど苦労しませんが、先日青山を歩いていたら、意外にも街路樹の下にのびるの青い髯を見つけました。

春の野草は、都心でもたくましく生えています。
 
 

2016年5月6日金曜日

端午の節句

新緑の季節、風にたなびいている鯉のぼりを見ると、なぜかワクワクします。

一日遅れてしまいましたが、55日は「こどもの日」。
五節句の一つ、端午(たんご)の節句でしたね。

*「端午」とは、旧暦の午の月(5月)の最初(「端」とは「はじめ」を意味する)の“午の日”のこと。

端午の節句の別名は、「菖蒲の節句」。

五節句はどれも植物と縁があることは、以前の桃の節句の記事でも取り上げました。

菖蒲の葉は剣のように鋭く、実際に殺菌力も持っています。
『本草綱目』では、その味は、その性はとし、古代から“神仙の薬”として尊ばれてきたことが記されています。

元々は、季節の変わり目に身体を養生する知恵として、植物の力を借りるのがその起源。
菖蒲や蓬などの邪気を祓う薬草を軒下につるしたり、菖蒲湯に浸かったりして、無病息災を祈願しました。
ですが、日本では時代が下って、武家社会になると、「菖蒲」と「尚武」(しょうぶ:武を尊ぶの意)をかけ、男児の節句として定着していったようです。

*柏餅を食べ、鯉のぼりや兜飾りを飾る…これらは”男児の節句”となった日本独自の風習のようです。
 柏は新芽が出るまで古い葉が落ちないことから、「家系が絶えない」縁起物として広まりました。
 鯉のぼりや兜飾りは、男児の出世や、武芸上達などを祈願して飾られます。

ちょうど立夏を迎えるこの時期は、春から夏へと季節の変わる節目の時。
気温の寒暖の差が激しく、体調のバランスを崩しやすいため、植物の力を上手に借りつつ、養生されてくださいね。

もう遅いですが端午の節句にオススメの簡単食養生レシピをご紹介します↓

【粽風中華おこわ】


〈材料〉

もち米・うるち米:同比率
鶏肉・油揚げ・椎茸・筍・人参・生姜などの具材
だし汁・ゴマ油・薄口醤油・酒・みりん・オイスターソース・塩

〈作り方〉

① もち米とうるち米を合わせて洗い、炊飯器に入れておく。 
② 椎茸・鶏肉・人参・筍はサイコロ状に切る。
③ 油抜きした油揚げは細切り、生姜はみじん切りに。
④ ②③の具材をゴマ油で炒める。
⑤ ①にだし汁と調味料適量を加え、④を入れて水を加減し炊き上げる。
⑥ 炊き上がったら、香り付けにゴマ油を適量加え、全体を良く混ぜ合わせる。

本格的な粽は、笹の葉で包んで蒸すのですが炊き上げたおこわを、笹の葉の上に乗せるだけでも雰囲気は出ますよ。

また、男の子の節句ということで、”男は度胸”。

キモの据わった素敵な男性になるためには、を養生するのが一番です。
肝胆の好む味は薬膳的には酸味ですので、蓬や筍など、山菜を使ったちらし寿司もオススメです。


今年の春の恵みを味わえるのも、あと少し。
この季節にしか出会えない旬の食材を、楽しんでくださいね(*^_^*)



余談ですが、中国の故事*にあやかり、男子の立身出世を願って飾られる“鯉のぼり”。

真鯉の上に、五色の吹き流しがついていますが、これは五行に由来します。
意外なところに、五行の文化が息づいているものですね。



*竜門という滝を上りきった鯉が、竜となって天へ昇ったという故事に基づく。“登竜門”。

せっかくなので、”立身出世”だなんて現世的なことに留まらず、より自分を高めて次元上昇していくような、もっと壮大な祈りを込めようと思います(*^_^*)


春の酵素が出来ました♪

4月に仕込んだ春の野草の酵素が出来上がりました。

10㌔分の野草を濾す作業はなかなか大変でしたが、蓬などの春の香りのする、黒砂糖のような涼やかな甘みの酵素に仕上がりました。


これは野に生えていた植物そのもの。
液体に姿を変えたものの、まだまだ元気に生きているのです。

密閉してしまうと爆発したり、溢れてしまうので(経験済)、呼吸が出来るように保存瓶の蓋は少し緩めておきます。

梅酢を加えて炭酸で割ると、味のバランスが良くなりました。




絞り終えた滓はハーブボールのようにサラシに包んで、お風呂に入れて利用します。
さらにそれを畑に持って行って、土に還す予定。

自然が恵んでくれるものに、無駄なものなんて、何もありませんものね(*^_^*)


2016年5月1日日曜日

補い合うバランス~相剋関係の意味

補・助・益・生・剋の関係を知ったところで、考えたこと。  
もし、五味の長所全てを持った理想の食べ物が存在したなら。


五臓すべてにとって有益に働く食べ物があれば、それだけ食べていれば良かったかもしれないし、そもそも薬膳の理論なんて不要ですよね。

でも、この“剋”という抑制の働きは、自然界の妙とでもいうような、とても大切な役割を担っています。

相剋関係があったからこそ、人は”調理・料理”をする、という知恵を持てたのではないでしょうか。
組み合わせて食べる…つまり料理して食べることで、お互いの短所を補い合い、長所を生かすことができるのです。

それだけではありません。

食文化というものは、さまざまな食材や味を組合せることで、ここまで多彩に進化してきました。

何事も完成されたら、変化=進化は止まります。

そう考えてみると、食べ物の持つ働きは、それひとつでは完成されないように、あえて不完全に作られているのかもしれない…ようにも思えてきます。
 
それは何も、食べ物に限ったことではないかもしれませんね。
 
人間関係でも、同じことが言えるかもしれません。
例えば、自分にとって“苦手な人”は、相剋の関係。
避けてしまいたいと思うのは人情です。

ですが、そういう存在があって始めて、自分というものを客観視したり、磨くことが出来るのかもしれません。

私たちひとりひとりの個性が、まだまだ完成されたものではないからこそ、悲喜交々の様々な感情を学べるように。

そして、自分の短所や至らない部分を、誰かが抑えてくれたり、補ってくれて、はじめて全体のバランスが取れるように。


この世界は、不完全に見えていて、実は完全なのかもしれません。

 

「補・助・益・生・剋」の五つの働き

木・火・土・金・水-五行を味に当てはめると、酸・苦・甘・辛・鹹。

この五つの味はそれぞれ、同じ行に属す五臓を養います

酸味は肝。
苦味は心。
甘味は脾。
辛味は肺。
鹹味は腎。

ですが、たったひとつの臓器だけに働きかけるわけではありません。

 ひとつの味は、五臓に対し、補・助・益・生・剋という五つの働きを持ちます。

例えば、酸味の補・助・益・生・剋を見てみましょう。
酸味は肝・胆を補い、腎・膀胱を助け、肺・大腸を益し、心・小腸を生み育む味。

四つの臓器に有益に働くのですが、ただ一つ、脾・胃に対してだけは、押さえるように働きます。
五臓を家族関係に例えて、酸味の働きを表すと、下図のようになります。
 
 
味というのは、まず”自分”が属す行の臓器をいます。
ひとつ前、”両親”に当たる部分の臓器をけます。
もうひとつ前、”祖父母”に当たる位置の臓器をします。
自分の後、”子供”に当たる部分の臓器をみ育てます。(相生関係)
そして、自分が属す行から見て、””に当たる位置関係の臓器にだけは、抑制に働きます(相関係)。

この補・助・益・生・剋の相関関係は、どの味も共通です。

五つの味が生み育む関係=相生関係は、五角形を描きます。
五つの味が抑え合う関係=相剋関係は、五芒星を描きます。

補・助・益・生・剋―四つの臓器に有益に働き、一つの臓器には抑えるように働く―の中で、相剋の関係が、薬膳や食養で最も大切なポイントとなります。