お肉を食べれば、元気になる。
お肉を食べなければ、力が出ない。
こんな風に口走って、晩ごはんのおかずにお肉をねだる方、結構多いのではないでしょうか?
身体を使うお仕事の方や、若い男性などは特に、お肉を欲して止みませんよね(笑)
外食で食べ物のリクエストを聴けば、第一声が“お肉”との回答が良く聞かれますし、
男性はもちろん、女性もお肉好きを公言する人が多くて、びっくり。
それに電車の広告やCMを見れば、「御馳走=お肉」の方程式が多い。
年配の方でも、「お肉が大好き」と言われる方が多いらしく、今や「お肉は元気の源」と言うイメージが定着していますね。
ちょっと考えてみましょう。
お肉と言えば、タンパク質。
アミノ酸によって構成されるタンパク質は、脂質・糖質に並ぶ、三大栄養素の一つです。
筋肉や臓器、皮膚など、カラダを作る要素として、とても大切。
わたしたちのカラダは、主に20種類のアミノ酸から構成されていると言われています。
中には、体内で十分な量を合成できず、食べ物から摂取しなければならないものもあります。
人の場合は、9種類あると言われ、これが必須アミノ酸ですね。
*必須アミノ酸:トリプトファン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・ヒスチジン
さて、ご存知の通り、タンパク質には動物性と植物性の二種類があります。
必須アミノ酸にのみフォーカスするなら、9種類をバランスよく含む動物性タンパク質に対し、植物性タンパク質は一部不足しており、食品を組み合わせる必要があるそうです。
動物性タンパク質の方が、アミノ酸バランスが優れている、と言われる由縁ですね。
ですが、動物性タンパク質の方が優れている=肉食が良い、という方程式は、単純には成り立ちません。
第一に、タンパク質を豊富に含む動物性食材の上位は、魚介系が大半を占めている、ということ。
第二に、お肉はタンパク質と同時に、脂質が多く含まれている(つまりタンパク質摂取のメリットと同時に、脂質多量摂取のデメリットを併せ持つ)、ということ。
魚介、特に青魚に含まれる脂質は良質ですし、素直に考えれば、動物性タンパク質は、魚介から摂取する方が得策です。
*脂質については、また別稿で取り上げるとして…
さらに。
果物や炭水化物と比べて、お肉を消化するのには時間がかかります。
また、過剰摂取したお肉は、アミノ酸として分解・吸収されずに、腸内で腐敗し、体内毒素を作りだす、とも言われています。
考えてみれば、お肉を37℃のお部屋に数時間放置したら、普通に考えて腐敗しますよね。
これが体内で起きていることをイメージすれば、分かりやすいのではないでしょうか。
また、お肉というのは、大体が血熱を持たせる食べ物です。
さらに“温性”である“油”と合わせた調理法も多い。
血熱が高くなると、循環器系にさまざまなリスクが生じると言われています。
日本人は肉食文化ではなく、穀類を主食としてきた、どちらかと言えば草食系の民族。
西洋の人と比べると、腸が長い、とも言われますね。
肉食が始まってから、日本人の大腸がんが劇的に増加した、という因果関係も指摘されていますし、高血圧や動脈硬化など、そのリスクは確かにあると思います。
肉食をする上で考えたいのが、もう一つ。
これは、お肉に限ったことではありませんが、“食べ物がどこから来るのか”、を考える必要があります。
お肉は、もとは牛や豚、羊や鳥たち。
彼らが“何を食べて育ったのか”が、とても大切です。
食べ物というのは、“何か”が姿を変えたもの。
「お肉」と一言でいっても、その背景は決して無視できないのです。
極端な話ですが、狭い牛舎で、カップラーメンだけを食べて育った(牛がカップラーメンを食べるかどうかは置いておいて…)牛さんと、広々とした牧場で牧草を食べて育った牛さん。
同じ牛さんの姿をしていますが、構成要素は“同じ”でしょうか?
考えるまでもないことですよね。
食べ物の違いだけでなく、環境が牛さんのメンタルに及ぼす影響から見ても、雲泥の差があります。
家畜飼料には遺伝子組換えのトウモロコシが使われ、
成長を早めるためのホルモン剤が投与され、
狭くて劣悪な牛舎環境から生じる病原菌対策として、過剰な抗生物質が投与される…
全て人の都合で、不自然に不自然を積み重ね、化学的に生産・加工された“お肉”という製品が作られているのです。
こうした背景やその他の影響を問わず、ただデータ上「必須アミノ酸を全て含んでいる」から、「肉食万歳ヽ(^o^)丿」となるのは、とても短絡的で危うい考え方だと思えてなりません。
また、メリット以上にデメリットの要素が多いのに、含まれる栄養素だけをみて優劣をつけることに、あまり意味が無いと言うことも、分かって頂けると思います。
タンパク質を得るなら、同じ動物性でも魚介や、魚介を原材料とした乾物などからも効率的に得られますし、植物性タンパクの代表、大豆やその加工製品である納豆・豆腐・味噌は、必須アミノ酸も賄えて、リスクも少ない。
お肉を食べることを、否定しているのではありません。
適度に、美味しく頂けば良いと思います。
でも、お肉に限らず、食べ物を食べれば、“元気”はもらえます。
お肉を食べれば、元気になる。
お肉を食べなければ、力が出ない。
こうした昨今の過剰な“肉食信仰”は、食養の観点から見れば、疑問があります。
ちなみに、長生きしている人の大半が「お肉が好き」と答えると、誰かが言っていました。
確かに、昨年90歳超で他界した祖母も、「お肉大好き!」でしたね(^_^;)
ただ、だからと言って
“肉食が長寿の秘訣”とは言えないと思います。
祖母は、若い時からお肉を食べていたわけではありません。
戦時中~戦後の粗食に耐えた世代です。
わたしは玄米や雑穀米を好んで食べたのですが、祖母は「貧しい時代を思い出す。白いごはんがいい」と言って、それを嫌いました。
カラダを作る子供時代から20歳過ぎまで、祖母が耐え忍んだ“粗食”。
この粗食こそが、90歳を過ぎても肉食を可能にする消化能力を養ったのだろうと思います。
祖母の子供時代には、化学調味料などに汚染された食べ物はなかったですし、農薬や化学肥料も無縁の時代でしたしね。
だから、昨今の高齢者の「お肉が好き」は、それだけ高い「消化能力」と「健康体」を持っている、ということであって、「肉食だから長寿」だとは言えないはずなのです。
幼少時から肉食可能だった世代が、高齢者になった時、果たして同じように健康で食べられるかどうか…これは、もう少し先に、証明されるでしょうね。
“肉食信仰”だけに限らず、今の世の中は非常に浅くて、ある意味偏った価値観が遍満しています。
何か一つだけを判断基準にして、物事を定義付けることはできません。
物事を深く、広く見つめる思考を養い、情報に流されないバランス感覚を育てて欲しいと願います。
いずれにしても、食べ物は感謝して頂きたいですね。
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