陰と陽は東洋医学ひいては“薬膳”の根幹となる概念です。
自然界のあらゆる事物や現象が、陰陽の消長衰退の運動調和で出来ていると考えられ、自然の恵みである食べ物もその例外ではありません。
食材の陰陽は、それを食べた時に、
“身体を温めるように作用する”→陽性か、
“熱をさますように作用する”→陰性か、
ということで判断されます。
寒熱の程度は、以下の五段階で現され、これを五性(ごせい)と呼びます。
熱(温める作用が大きい。温とも)
温(温める作用がマイルド。温に対して微温とも)
平(温めも冷やしもしない中庸)
涼(熱を冷ます作用がマイルド。微寒とも)
寒(熱を冷ます作用が大きい)
東洋医学の本草書(医薬学書)には、薬となる植物や食べ物の性質(五性)が必ず記されています。
さて、この食べ物の陰陽をどう活かすのか、というと、“身体の陰陽のバランスをとるため”です。
陰陽のバランスがとれた状態のことを平(へい)と言いますが、わたしたちの身体には、調和のとれた状態を維持するホメオスタシス(恒常性)機能が備わっています。
そしてこのバランスが崩れると、“病”という症状として現れると考えます。
つまり、いかにして“平”を保ち、アンバランスになった場合に“平”の状態をとり戻すか―これを考えることが、東洋医学の基本となります。
そこで食べ物の陰陽が重要になります。
例えば、自然界の陰気が高まれば、私たちの身体は”陽”の気を増やしてバランスを取ろうとします。
もっと分かりやすく言えば、陰気が最も強くなる冬、気温は下がり寒くなります。
だからと言って、変温動物のように、わたしたちの体温は下がりませんよね。
それは、わたしたちの身体の中の熱を生む力が働くことで、バランスを取っているからです。
食べ物の持つ、温めたり、冷ましたりする陰陽の作用は、こうした身体の機能を助けて、中和してくれるのです。
つまり、身体が冷えている時や寒い季節には、身体を温めてくれる食べ物で陽の気を補い、身体が火照っている時や暑い季節には、熱をさましてくれる食べ物で陰の気を助ける、ということです。
でも膨大にある食材のどれが陰でどれが陽か、なんてとても覚えられませんよね(・_・;)
今はネットで検索すれば、涼・寒(陰性)の食材、温・熱(陽性)の食材も、わかりやすく整理された一覧表などが、簡単に見られるようになりましたので、いろいろ見て参考にされてみてください。
*ただし、食材によっては陰陽の分類が真逆だったりと、判断が分かれるものもあります。
これは何百年・何千年の歴史の中で、さまざまな人々が注釈を加えたりしながら補訂されてきたので、それぞれの経験に基づいた陰陽さまざまな見方があるんだな、ということで、心を広く持って“大体こんな感じなんだな”くらいにしておきましょう♪
さて、ここでは食材の陰陽を判断する大まかなポイントをご紹介しておきます。
ポイントは二つあります。
ひとつめが旬―季節との関係です。
自然界の陽気が最も盛んになるのは夏です。
この時は、陰陽のバランスをとるかのように、陰性の性質を持った食べ物が旬を迎えます。
夏野菜はいずれも水分を多く含み、多くが身体の熱を冷ます作用があります。
反対に陰気が最も盛んになる冬、旬を迎える根菜類の多くは、身体を温める陽性の性質があります。
もう一つは、味。
基本的に苦味と酸味の食べ物が体の熱を冷ます味とされます。
反対に身体を温めるのは、香辛料などの辛味・鹹味(かんみ:塩辛い味)になります。
もちろん、これはとてもおおざっぱな判断基準なので、細かく見ていくと例外はありますが、日々のお料理の食材選びに、意識して“陰と陽のバランス”を取り入れてみるのもいいかもしれません。
ちなみに寒いこの時期は、積極的に“陽”の気を補いたい季節。
お料理の調理法としては食材に火を入れたり、温かいお風呂に入ったり、身体の内外ともに冷えないように心がけてくださいね。
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