さて、数ある春の野草の中で、本日は「萱草-カンゾウ-」を紹介したいと思います。
和名では「憂いを忘れさせる草」の意で、ワスレグサとも言われるユリ科ワスレグサ属の多年草。
春先になると、田んぼの畔などそこかしこに見られ、夏にオレンジ色のユリに良く似た花を咲かせます。
和歌では夏の季語であり、その名前から、郷愁や恋人への想いなど、忘れたいことがある心境を表す言葉として詠まれるんだとか。
ちょっとアカデミックに、『万葉集』に読まれた萱草の和歌を鑑賞してみましょう(^o^)丿
忘れ草わが紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため
(意訳)忘れ草をわたしの下紐につけてみました。香久山のある懐かしい故郷を忘れようと思って。
-大伴旅人-『万葉集』巻三
忘れ草我が下紐に付けたれど醜の醜草言ことにしありけり
(意訳)(あなたへの恋心を忘れようと思って)忘れ草をわたしの下紐につけてみたけれど、バカ草め!忘れ草なんて、名ばかりでしたよ。
-大伴家持-『万葉集』巻四
旅人さんの故郷を想う気持ちは共感できますけれど、家持さんのは…萱草に対してひどい言いがかりですよね(・・;)
さて、若葉や花の蕾、根は食用にされ、『本朝食鑑』によれば、その味は甘味、性は“涼”、無毒とあり、救荒植物としても古くから親しまれてきました。
若葉ゆで水に浸し調へ食ふ。根蕨の粉を作る法の如く餅に造り、又糧となすべし。(草木図)
苗の花もゆびき、水にさらし食ふ。又、かて物とす。根も又粉となし、米の粉か麦の粉か、又は米粃(ぬか)をまじへ、餅に作り食ふ。(かてもの)
葉が若いうちに摘んで、お浸しにし、酢味噌で食べると、臭みのないネギのようなしゃきしゃきした歯ごたえが楽しめます。
ホタルイカやタコなどを加えれば、少し贅沢な小鉢の一品になりますよ。
葉が大きくなってしまうと、先の方が固くなってしまいますので、根本に近い部分だけを食べるのがオススメです。
中華料理では、花の蕾を乾燥させたものを「金針花」と言い、スープの具など利用するのだとか。
ここ数日の温かさで、もう葉っぱはかなり大きくなってしまっているので、初夏の蕾を楽しんでみるのも一興です(*^_^*)
萱草の酢味噌和え |
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