2017年4月27日木曜日

本草MEMO-萱草 カンゾウ-

さて、数ある春の野草の中で、本日は「萱草-カンゾウ-」を紹介したいと思います。


和名では「憂いを忘れさせる草」の意で、ワスレグサとも言われるユリ科ワスレグサ属の多年草。
春先になると、田んぼの畔などそこかしこに見られ、夏にオレンジ色のユリに良く似た花を咲かせます。

和歌では夏の季語であり、その名前から、郷愁や恋人への想いなど、忘れたいことがある心境を表す言葉として詠まれるんだとか。

ちょっとアカデミックに、『万葉集』に読まれた萱草の和歌を鑑賞してみましょう(^o^)丿

忘れ草わが紐に付く香具山の古りにし里を忘れむがため

(意訳)忘れ草をわたしの下紐につけてみました。香久山のある懐かしい故郷を忘れようと思って。

-大伴旅人-『万葉集』巻三

忘れ草我が下紐に付けたれど醜の醜草言ことにしありけり

(意訳)(あなたへの恋心を忘れようと思って)忘れ草をわたしの下紐につけてみたけれど、バカ草め!忘れ草なんて、名ばかりでしたよ。

-大伴家持-『万葉集』巻四

旅人さんの故郷を想う気持ちは共感できますけれど、家持さんのは…萱草に対してひどい言いがかりですよね(・・;)

さて、若葉や花の蕾、根は食用にされ、『本朝食鑑』によれば、その味は甘味、性は“涼”、無毒とあり、救荒植物としても古くから親しまれてきました。

若葉ゆで水に浸し調へ食ふ。根蕨の粉を作る法の如く餅に造り、又糧となすべし。(草木図)

苗の花もゆびき、水にさらし食ふ。又、かて物とす。根も又粉となし、米の粉か麦の粉か、又は米粃(ぬか)をまじへ、餅に作り食ふ。(かてもの)


葉が若いうちに摘んで、お浸しにし、酢味噌で食べると、臭みのないネギのようなしゃきしゃきした歯ごたえが楽しめます。
ホタルイカやタコなどを加えれば、少し贅沢な小鉢の一品になりますよ。

葉が大きくなってしまうと、先の方が固くなってしまいますので、根本に近い部分だけを食べるのがオススメです。

中華料理では、花の蕾を乾燥させたものを「金針花」と言い、スープの具など利用するのだとか。


ここ数日の温かさで、もう葉っぱはかなり大きくなってしまっているので、初夏の蕾を楽しんでみるのも一興です(*^_^*)

萱草の酢味噌和え


2017年4月26日水曜日

春の恵み

今年も春の酵素を仕込みました。

都内はもう葉桜ですが、田舎はまだ桜の花が満開。
うぐいすの鳴き声を聞きながらの野草摘みは、それだけで元気をもらえる気がします。



ノブキ・ヨモギ・スギナ・セリ・ミツバ・ウド・タンポポ・イタドリ・ハコベ・カキドオシ・クマザサ・オオバコ・ノニンジン…

春が旬のものって、どれも本当に緑がキレイです。
うまく言えないのですが、柔らかくて光を放っているようなさわやかな感じ。



春は解毒の季節。
解毒を主る肝臓を助け、血をきれいにしてくれる食べ物を頂くのが、自然の理にかなう養生法となります。

この季節に芽吹く木の芽や野草には、独特の苦味がありますよね。
苦味には“瀉下作用”といって、いわゆるデトックス効果があるのです。
ですから、春の山菜はとても良いお薬。

余った野草は、そのまま夜の食卓に並びました。

ウドとギョウジャニンニクの天ぷら。
セリのお浸し。
蕗味噌。
ウドとノブキのキンピラ。
カンゾウの酢味噌和え。
ノビルの卵とじ。
ヨモギご飯。

どれもシンプルなお料理ですが、解毒作用を持つ味噌や酢との組み合わせは、薬膳の理にも適った、自然のエネルギーを効率良く借りる、最高の知恵です。

最近は山菜を誤って食中毒などの事故も起こっているようですが、どれが食べられる植物なのか、どうしたら食あたりをしないですむか、こうした知恵は出来るだけ受け継いでいきたいものですね。